2016年07月31日

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

ニュージーランド空軍が第二次世界大戦後に初めて導入した戦闘機はイギリスのデ・ハビランド社のバンパイアで、同空軍でも最初のジェット戦闘機となりました。

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

双ブームの胴体が特徴的な機体ですね。当時のジェットエンジンの技術では、このような機体設計&エンジン配置の方が出力を効率良く使えるという設計陣の結論になり、奇抜なデザインになったようです。

そのせいかエンジンが一基にもかかわらず、バンパイアと同時期に登場したエンジンが2基のイギリス製の戦闘機、グロスター・ミーティアと最大速度がたいして変わらないです。
※ただし、ミーティアのF.3型との比較の場合。後期型だと、更に100km/hほど差をつけられてしまいます。

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

ニュージーランド空軍は、そのミーティアも試験的に導入していて、戦闘機型のF.3を1機、練習機型のT.7を2機導入しています。(計3機)

バンパイアはニュージーランドと本国イギリス以外でも世界で30ヶ国(計32ヶ国)に採用され、第二次世界大戦後に輸出されたイギリス製の戦闘機の中でも最も多くの国に導入された機種となりました。ちなみに、ミーティアは17ヶ国で採用されました。

ニュージーランド空軍が導入したバンパイアのタイプは戦闘爆撃機タイプのFB.5と、それのニュージーランド仕様であるFB.52が合わせて47機に、複座の練習機型であるT.11と、それの輸出仕様であるT.55が合わせて11機の計58機が導入されました。

そのバンパイアの後継機としてニュージーランド空軍が導入したのは、同じデ・ハビランド社がバンパイアを元に改良・開発したベノムです。主な改良点は主翼を僅かながら後退翼とし、翼端に燃料タンクを装着させ、エンジンをより高出力の物に換装した点ですね。

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

そのおかけで最大速度はミーティアの後期型と同程度になりました。ベノムはF-86やMig-15ほど主翼の後退角もキツくなく、最大速度も100km/hほど遅いのですが、高高度での性能はむしろ優っていて、運動性も良かったらしいです。

ニュージーランドはベノムの戦闘爆撃機型であるFB.1を44機導入しました。ニュージーランドを含め、ベノムは7ヶ国で採用されました。バンパイアと比べると輸出国はだいぶ減りましたが、7ヶ国に輸出できたことは、普通に考えれば充分な数字でしょう。

ニュージーランド空軍が導入した唯一のジェット爆撃機は、イギリスの新鋭の航空機製造会社であるイングリッシュ・エレクトリック社のキャンベラ爆撃機ですね。平凡な設計の機体ながら、凡庸性の良さや拡張性の良さもあって、大べストセラーになった機体です。

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

天下のアメリカ空軍もマーチン社が自国向けに作った改良型・B-57として採用するぐらいです。アメリカは通常型のキャンベラも2機だけ導入していますね。ニュージーランドやアメリカも含み、キャンベラは17ヶ国で採用されました。

ニュージーランド空軍は爆撃機型のB.2、B.8、B.12の各型を20機に、練習機型のT.4、T.13、T.17の各型を11機の計31機を導入しました。1959年から配備を開始し、1970年まで使用しました。

ニュージーランド空軍が1972年からバンパイアの複座型の練習機の後継として採用したのはBAC(ブリティッシュ・エアクラフト・コーポレーション)のストライクマスターです。この機体は練習機型であるジェット・プロボストの機体構造を強化して、武装できるようにしたタイプです。

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

なので、中等のジェット練習機として使いながら、いざという時には軽攻撃機として使える、そんな機種になっています。ニュージーランド空軍はニュージーランド仕様型であるMk.88を16機導入しました。1972年から配備を開始し、1992年まで使用しました。

人口が少なく軍の人員があまりいない、もしくは軍事費にお金をかけられない国の空軍は大体、1個飛行隊を戦闘/高等練習部隊とし、もう1個飛行隊を中等訓練/軽攻撃部隊としている国が多いと思います。

こうすれば、どちらかの機種が事故を起こし、事故機の原因究明のために飛行禁止処分にされている間にも、攻撃能力のあるもう1機種を運用出来ますからね。

日本の航空自衛隊は戦闘機を3機種(F-15・F-2・F-4)も運用しているため、中等ジェット練習機であるT-4は攻撃能力を持っていませんですしね。

ストライクマスターは11ヶ国に採用されましたが、採用国を見てみると、あまり経済状況が良い国は少ない様に思います。同年代のジェットCOIN機である、A-37ドラゴンフライやフーガマジステールはエンジンが双発なので、単発のストライクマスターは機体単価も維持費も安く済みそうです。

ニュージーランドが1970年からキャンベラ爆撃機の後継機として導入し、ニュージーランド空軍最後の攻撃機となったのはダグラスA-4スカイホークですね。小型軽量な機体なのに兵器搭載量が多くて一部の国でかなり重宝がられた機種です。※運動性能が良いので、ニュージーランド空軍では戦闘機としても運用しています。なので、戦闘機であるベノムの後継機も兼ねた可能性もあります。

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

ニュージーランドはまず、単座型・複座型のA-4FおよびTA-4Fのニュージーランド仕様であるA-4Kを10機とTA-4Kを4機の計14機を導入しました。その後、84年に空母メルボルンの所有をやめ、オーストラリア海軍から余剰となっていた単座型のA-4Gを8機と、複座型のTA-4Gを2機の計10機を中古で購入し、合計機数は24機になりました。

1985年には、その24機のうち20機に近代化改修を施し、運用していくKAHU計画に着手し、89年に改修は完了しました。その計画はF-16と同じAPG-66に海上探索モードを付け加えたレーダーを装備し、AGM-65マーベリックやレーザー誘導爆弾などの新しい兵器を装備できるようにしたものです。

ニュージーランド空軍のA-4はその後、空軍の戦闘機部隊を解体させられる2001年までの約30年間使用されました。ニュージーランドを含みA-4は10ヶ国で導入され、ブラジルとアルゼンチンでは今でも現役です。

ブラジルでは2025年まで運用すると言っているので、A-4が初飛行した1954年から数えると、70年以上も飛ぶことになりますね。もちろん、製造された年にもよるので同一の機体が70年以上飛ぶ訳ではないのですが……。

A-4の後継機とされているA-6やA-7が既に退役してしまっているので、これはある意味凄い事実ですね。機体の単価や維持費の安さの良さが、後になってきて出てきた感じなのかな?

ニュージーランドが攻撃能力を持っていて、最後に導入した機体は複座の中等ジェット練習/軽攻撃機であるストライクマスターの後継機として採用したイタリアのアエルマッキMB-339CBです。

ニュージーランド空軍の戦闘機・攻撃機・爆撃機(戦後編)

MB-339は1991から導入を開始し、A-4と同じく戦闘機部隊が解体される2001年までの約10年間使用されました。ニュージーランドはMB-339の中でも、特に攻撃能力が高いCB型を採用し、18機導入しました。

MB-339CBは最高速度はA-4より200km/hほど遅く、兵器の搭載量も半分ほどですが、AIM-9サイドワインダーやAGM-65マーベリック、クラスター爆弾などを装備でき、元が練習機にしてはかなり強力です。

MB-339は11ヶ国で採用されましたが、同年代のBAeホークやダッソー/ドルニエ・アルファジェットほど洗練された設計ではなく(前の型であるMB-326をベースに作られている)機体単価が低く、維持費が余りかからないのが特徴ですね。改良されてるとはいえ、エンジンも前任のストライクマスターと同じイギリス製のバイパーですし。

こうやって見てみると、ニュージーランド空軍は仲の良い国からコストパフォーマンスに優れ、国情にあっている機種を巧みに選定しているように見えます。

そして現時点では、ニュージーランド空軍が新しく攻撃能力をもった機体を導入しない限り、第二次世界大戦後に攻撃能力を持った機種を導入したのは上記の7機種になりますね。※ただし、対潜哨戒機は除く。





Posted by ヒラシン at 19:35│Comments(0)
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